・大阪府/会社員/37歳
・妻(34歳)/息子(小3)
・結婚11年目
・学生時代はラグビー部、趣味は筋トレ
・理想のタイプ:綾瀬はるか、黒木華
・誰似:鳥谷敬
・社内不倫経験あり(ばれてない)
30代も半ばを過ぎて、残業で遅くなったり、夜遅くまで飲んだりすると、次の日がつらいことが多くなっていました。
年のせいか…とも思ったのですが、まだまだ老け込む年でもないだろ!と、スポーツジムに入会することにしました。
基本的には週2回、水曜の仕事の後(ノー残業デイ)と、土曜日の午前中をトレー二ングに当てることに。
メニューはトレーナーと相談して、水曜日はマシン中心に1時間半のプログラム。土曜日はそれプラス水泳をすることに決めました。
このスポーツジムはオープン間もないこともあり、マシンも設備もすべて綺麗で清潔感があり、私も気持ち良く体を鍛えることができました。
入会前は、まったく体を動かすことがなかった私でしたが、ジムに通ううちにだんだんと学生時代にラグビーで鍛えた負けず嫌いの心が騒ぎ出し、もっと強い相手、もっと強い負荷をと、ストイックに突き詰めていくのでした。
そんなある日、チェストプレスの最中にふと誰かの視線を感じて振り向くと、美しい女性と目が合いました。
彼女はトレッドミルでウォーキングしていました。
彼女の方は0コンマ数秒で視線を切り、さらに一心にウォーキングを続けていました。
私はというと荒い息を吐きながらマシンをゆっくりと戻し、しかし顔は彼女の方を向いたままその姿に見入っていました。
どうしても目が離せなかったのです。
その姿勢の良さにも魅かれましたが、女性にしては広い肩幅、歩くのに合わせて上下するTシャツ越しの胸のふくらみ、しっかりと肉のついた腰まわり、リズミカルに動く2本の長い脚。
そして女優の木村多江によく似た、クールな和風顔。
ハッと思い直してマシンに気を戻したものの、鼓動が早くなったまま治まりませんでした。
私は彼女に一目惚れしていたのです。
ジムで見かける美人にときめく中年男
それから私はトレーニングの最中でも彼女を探すようになっていました。
水曜日には彼女と会うことはありません。土曜日のマシンメニューのおよそ30分ほどが、彼女と接点がある時間帯でした。
私は彼女の姿を見つけると、注意深く彼女に視線を飛ばしていました。
ただ最初の時のように、目が合うほど凝視するのは避けていました。あらぬ疑いをかけられて、彼女に危険視されることを恐れたのです。
用心深く、彼女が横を向いている時に、その体を、横顔を眺める。
トレッドミルで歩く様を後ろから見つめ、形のいい(本当に丸くて大きな)お尻をたっぷりと愉しむ。
彼女の歩く様子を後ろから見るために、マシンの順番を組み直したりもしました。
トレーニングの手は休めませんでしたが、彼女を目で追う時間はどんどん増えていきました。
我ながら、何やってんだ、中学生や高校生でもあるまいし…と一人苦笑いしたりもしましたが、それを止めることはありません。
誰に迷惑をかけるわけでもない、中年男のひそやかな喜びの時間だ、と、そんな一人遊びを楽しんでいました。
トレーニングジムでの会話から次第に近づく2人
その日私はマシンメニューを終え、壁の近くで汗を拭いていました。
少しハスキーなアルト声が、私に向けられたものだとわかったのは、彼女が私の隣に来てほほえんでいたからでした。
思いもかけない出来事に思考が固まってしまい、ろくな返答もできない私に、彼女は言葉をつなげてきます。
私の方こそ、いつも見てます…と言いかけて口をつぐみました。
そんなこと言えるわけない、私はバカか。
屈託なく笑う彼女に、私の心は雪崩のように全面崩落してしまいました。
それから、ベンチに座って少しだけ会話をしました。
彼女はツムラユウコ(仮名)さん、35才。今は仕事をやめて主婦業に専念中(既婚者だった!)。
一緒に入会した友達が早々に辞めてしまい、自分もどうしようかと迷っていたけれど、私が気になっていたのでどうしても一度話したいと、機会をうかがっていたとのこと。
それが本当か嘘かはともかく、予想外の展開でお近づきになれたことが、まさに青天の霹靂でした。
既婚者同士の関係だけど止められない感情
それから私たちごく自然に話すようになり、トレーニングを終えた後に軽くお茶する仲になりました。
お互い既婚者同士なので、誰かにあらぬ噂を立てられてもね…と、私の車で少し遠くの店まで行くのがお決まりになりました。
トレーニングの汗をシャワーで洗い流したあとの、彼女の爽やかな香り。そして成熟した女の色香に、いつも胸躍りつつも、その先の一線を踏み越えることができないヘタレな自分が、バックミラーに映っていました。
ある時一度だけ、彼女が水泳にやってきたことがありました(普段はプログラムに入れていない)。
アスリートのようなスイムウェア、にも関わらず女性らしいふくらみやくびれは隠せず、周りの男会員は皆彼女を視姦しているように思えました。
私は嫉妬に狂い叫びそうで、こんな無法地帯(とも言いたくなるほど興奮していた)にのこのこと無防備な肉体を晒しに来た彼女を、ちょっと軽蔑したりもしました。
しかしそれは私の過剰な妄想の成れの果てであり、彼女はあくまでストイックに、もっと自分を磨こうと思っていたのです。
(それ以降は、私の懸命のお願いによって、水泳メニューはしぶしぶ諦めてくれました)
私は事あるごとに、彼女は私を一体どう思っているのかを想像していました。
向こうから声をかけてきた。私に好意をもっていることを隠さずに、何度も車に乗って、まるでデートみたいな時間を繰り返す。
お互いにいい大人だ。常識も節度もある。しかしそれ以上に、男と女としての本能的な欲望を抑えつけて繕っている…
自分の真実を、彼女のものでもあるかのように勝手に夢想して、いや待てそんなことはない、そこまで刹那的な女じゃない、と心が右往左往する日々。
そんなもどかしい時間を突き破ったのも、やはり彼女でした。
ジムの駐車場に戻り、いつものように彼女が自分の車に乗り換える、と思ったその瞬間、彼女のくちびるが私の口をふさぎました。
途端に、ほとばしる熱い感情。
彼女を求める思いのすべてが決壊し、膨らみきっていた欲望の風船がぱちんとはじけました。
助手席の彼女に覆いかぶさって唇を吸い、髪の中に手をはわせ、背中から滑らせた手で肉感的な腰を抱き寄せる。
もう、我慢することはないのだ。
二人の間の薄膜は破れ去り、肌も、髪も、粘膜も、ぴったりと吸い寄せあって離さないような、狂おしい情動。
体の火照りはレッドゾーンを突き抜け、そのまま車を走らせてホテルへと滑り込み、果てることのない欲望を何度も何度も彼女の中に注ぎ込みました。
ただれた時間の中で、このまま死んでもいいと思えました。
不倫は終わり思いだけが残る
緻密な計画と周到なカムフラージュで、私たちの関係はそれからも続けることができました。
しかし最後はあっけなく訪れました。彼女が夫とともに引っ越すことになったと、ある日告げられて終わりになったのです。
大人と大人の道ならぬ関係が、そのまま続くことなんて思ってはいなかったものの、さすがに突然のエンディングには心が崩れ、泣きました。
不倫はなぜに、こうまで心を焦がし、肉体を燃やし尽くすのか。
イケナイコトだとわかっていても本能が理性を超えていく快感。そんな思い出にいつまでも翻弄されながら、私はまた、あの日の彼女のような人を探してしまうのです。
(大阪府/会社員/37歳)